doctor_kanjya3 病院や医院、あるいはお医者さんというのは、病人を診て貰うところですね。最近では、健康保険のおかげで、少し風邪を引いたといってはお医者さん、からだがだるいといってはお医者さん、と気軽に医院に行く人が多くなっています。これが国民医療費を引き上げているわけですが、日本国民のくすり好きにも原因があるようです。

 お医者さんに行った場合に私たちが経験するのが、良くいわれる「3時間待ちの3分診療」です。これは日本の医療制度からきているわけです。

3分で診察しようが1時間かけて診ようが、料金は同じです。初診は初診、再診は再診、その分しかもらえません。初診は2095円、再診は530円です。また、新米の医者が診ようと、ベテランのお医者さんが診ようとお値段は一緒です。おかしな話で、これがお医者さんの間では不満のタネになってわけです。

註:平成22年度の初診料、再診料については、こちらをご覧ください。点数で明示されています。診察の内容の指針もあります。

 このような現状では、収入を上げようと思えば、工場の大量生産と同じで流れ作業で数をこなすしかありません。

筆者のベルギーに於ける診療体験

brusseles01 日本の3分診療との比較のために、欧米での例を挙げてみたいと思います。これは筆者自身の体験です。場所はベルギーのブリュッセルです。

 風邪を引いても、医者の診断書なしで買えるのはアスピリン程度なので、近所の医者にかかろうと思いました。電話で予約が必要だということを聞いていたので、予約を入れました。よほどの急患でない限り、日本のように飛び込みでは診てくれません。

 次の日、予約の時間に医院に行きました。その時間の予約は私一人なので、患者は私だけです。

 ところが、初診ということもあり、いろいろなことを聞くのです。過去の病状はもちろんですが、父のこと、母のこと、兄弟のことなど、とにかく質問の多さに驚きました。

そして、ベットに寝かせられ、胸に聴診器をあてられたのは、先生の前に座ってから、なんと1時間近くたってからです。結局、診察に1時間30分を費やしたのです。日本の診療に慣れきっている私は、そのときは、なんと愚図な医者だろうと思いました。しかし、これがいわゆる「診察」なのですね。

 その医者は、ご婦人が行くと、内科なのに、時には婦人科の方までみると、少し誇張されたような話が伝わっていましたが、病気の発生は本人がおなかだと思っても実際には身体全体の不調からきているわけですから、当然、そのようなこともあり得るのかも知れません。

brusseles02 ところが、日本の診療所の医者は1人5分、1日に64人の患者を診るといわれています(浅間郁太郎著「栄養生化学療法とサプリメント」)。診察でなく、まさに流れ作業です。

 今は、医薬分業の姿勢がかなり浸透してきているようですが、大きな私立病院では、分業とはいえ、自前の薬局を病院の近所に構えていて、かたちだけの医薬分業がかなり行われています。

 くすりは、「薬価基準」で決められいるのですが、実際は、製薬会社が大きく値引きをしますので、病院側の大きな収入源になっています。上述の浅間郁太郎氏は次のように書いています。

エイズで問題になった「濃縮血液製剤の場合、薬価は1本2万4千円。一回の投与で平均3本使用しますが、メーカーは半額で病院に納めるといいます。薬価差益は50パーセント。患者を100人集めれば大学病院の経営は安泰といわれます。これでは非加熱製剤の使用を止められなかったはずです」

 このように、病院は患者をくすり付けにして、営業をやっているわけです。

 私に薬局を経営している友人がいます。一緒に酒を飲むと、「お客さんにくすりを渡すときに、“お大事に”といって、渡しているけど、“お大事に”してもらって、早く治ったのでは商売にならないんだ。因果な商売だ」と愚痴をこぼしています。

 医者も同じことでしょう。病人がいて始めて商売になるのです。病人がいなくなったり、少なくなってしまう社会では困るのです。

 ですから、予防医学の発達により、病気にならなくなったら経済的に困るという矛盾を抱えています。
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