第3章 東洋医学と漢方薬

3-4. 漢方薬とエキス剤そして西洋薬との違い

現在、私たちが口にしている多くの「漢方薬」といわれるものは、エキス剤です。エキス剤とは生薬に含まれている有効成分を取り出して、粉末、錠剤、カプセルなどにしたものです。 

toyoigaku14漢方薬は、本来、数種の生薬を混ぜあわせて煎じて飲むものであり、これが標準とされています。しかし、毎日これをやるとなると、大変な手間がかかり、忙しい現代人にやれることではありません。そこで考えられたのがエキス剤です。こうすると携帯には便利ですし、手軽にどこででも服用することができます。

ただ私たちが常識的に疑問に思うのは、本来の漢方薬とエキス剤とは同じように効くのかということです。  

上記した細谷英吉氏は、「標準方式で作った湯液と、それをエキス剤にしたものとは、エキス剤にしたものの成分の量が劣っているという報告がある。この両者の優劣については学会で討議が行われている」と書いています。  

ただ、当然のことですが、大量生産されるエキス剤は、漢方医学本来の、一人一人の患者にあった処方をすることができません。いわゆる「さじ加減」ができません。

これを本来の「漢方薬」と呼ぶには、若干疑問を感じないではありません。しかし、効用がそれほど違わず、副作用も少ないというのならば、エキス剤の漢方薬も、手軽に飲めるインスタント薬品として現代人にはぴったりではないでしょうか。

次に、漢方薬と西洋薬との違いについて少し書いておきます。  
「現在の西洋薬はほとんどすべて化学操作によって合成された純粋な化学物質です。生薬中から抽出されたものでも、その有効成分の化学構造を決定し、次にそれを人工的に合成し、その純粋なものをくすりとして使います」(前出、細谷英吉氏)

このように西洋薬は化学式から人工的に作られた純粋な化合物なのです。ある症状に良く効く純粋な化合物を精製して、多くはそれを注射で与えますから、西洋薬は即効性があるのです。しかしその化合物に毒性があればそのまま出てきてしまいます。 

toyoigaku6これに対して、漢方薬はさまざまな生薬を混ぜて使うわけですから、たくさんの自然の化合物が入っています。どのくらいの化合物が入っているのか、正直なところ、まだ分からないそうです。そして、口から投薬しますから、胃、腸を経て、肝臓へと全身をめぐり、効果を現していきます。全身をまわりながら成分が相互作用を起こしていきます。

こうしてみると、一般に漢方薬は効き方が遅いといわれているのはある程度事実でしょう。しかし、口から飲み、肝臓を経る漢方薬は、解毒作用を受けやすくなるので、毒性が少なくなります。

最後に、西洋薬はある特定の症状や臓器には効きますが、他の臓器には影響を及ぼしません(風邪のくすりが下痢に効くということはありません)。漢方薬は、特定の症状や臓器ばかりでなく、他の隠れた病気や臓器にも良い影響を及ぼすことが度々あります。

[ミミズのささやき]

3-3. 漢方薬、生薬そして民間薬とは

広辞苑で「生薬」(しょうやく)を見ますと、“動植物の部分・細胞内容物・分泌物・抽出物あるいは鉱物で、そのまtoyoigaku13ま薬品として用いあるいは製薬の原料とするもの”とあります。

あるがままの草根木皮−薬草のことと思えばよろしいでしょう。  漢方薬というのは、若干の例外はありますが、“二つ以上の生薬を患者の症状を軽くさせる目的で混ぜ合わしたもの、あるいはその混ぜ合わせたものを、煎じた液”(細谷英吉著「漢方の科学」による。細谷氏はもと慶応大学医学研究科科長。日本東洋医学会名誉会員。故人)をいいます。

民間薬というのもあります。生薬、たとえばゲンノショウコ、ドクダミ、ハトムギ、センブリといったものを、医薬の専門家以外の人が、一つずつ、単独で使うものをいいます。

私たちは、日常、上の三つをひっくるめてすべて漢方薬と呼んでいるようです。専門的にはこれをはっきりさせないと「話が混乱する」として、厳密にわけています。  

東洋医学の治療のひとつに「漢方薬を使用する」方法があることを前項に書きました。このような場合の漢方薬とは、二つ以上の生薬を、患者の症状にあったものを混ぜ合わせて煎じた液、あるいはそれを乾燥させたエキス剤などをいうのです。

ここには、単に「混ぜ合わせる」*と書きましたが、実はこれが漢方薬の最大の特徴なのです。症状に合わせて「混ぜ合わせる」ことを、漢方では「方剤」といいますが、この「方剤」こそが数千年の経験によって積み上がられ、そして現在に引き継がれた漢方薬の神髄なのです。

生薬の中にはそれ一つだけで効能をあらわすものがたくさんあります。ゲンノショウコなどは、一昔前、多くの家庭で日常良く口にした「くすり」です。ドクダミも良く使われました。  

toyoigaku12それではなぜ、生薬を二つ以上混ぜて「漢方薬」を作るのかといいますと、混ぜることによって、その相互作用により、更に有効な、毒性の少ないくすりになるのです。数種、あるいは十数種の生薬を混ぜることにより、単独で煎じたときよりも、有効成分がより多く出てきて、ヒトの体内に吸収されやすくなるのです。そうすると効き目も早くなり、副作用も少なくなります。

どのような症状には、どのような生薬を、どの分量で混ぜるのか、これが数千年の経験と知恵によって生まれた漢方薬なのです。  

*この「混ぜ方」は、漢方の「証−しょう」という考え方に基づいて行われます。漢方医学は「証」に始まって、「証」に終わるといいます。「証」は一つの哲学ともいえます。詳しく知りたい方は、巻末の「参考書」の中の一冊をご覧下さい。  

[ミミズのささやき]

3-2.西洋医学と東洋医学の違い

単純な分け方をすると、西洋医学は救急医療又は対処医療であり、東洋医学は診療医学といえます。  

toyoigaku9例えば、伝染病などは西洋医学の分野といえます。臓器移植などもそうです。そもそも現代医学としての西洋医学は伝染病の病原菌発見や解剖からスタートしたのです。

東洋医学は、数千年の長い間に実際に病人に接して蓄積してきた臨床経験の結果であり、いってみれば人体実験によって、なりたっている医学なのです。西洋医学は急速な進歩を遂げたとはいえ、その歴史はまだ百数十年であり、動物実験の上になりたっている医学といえます。

そして更に、西洋医学は部分部分を切りとって診察しようとする医学であり、手術とくすりによって直そうとする医学です。 

これは、大学や大病院の内科が循環器科、消化器科、神経科、などというように、縦割りになっていることでお分かりでしょう。

しかし、人間が病気になったとき、消化器系統が悪いけれど、他はまったく問題ないなどということがあり得るでしょうか。身体はみなつながっているわけですから、消化器系統が悪ければ、他の部分に悪いところがあるのかも知れないのです。また、血圧が上がれば血圧を下げるくすりを使って、血圧を下げます。これは血圧を一時的に抑えているのであって、治療とはいえません。

高血圧の治療とは、高血圧になっている原因をさぐり、その原因を取り除かなければ治療したとはいえません。

これに対し、東洋医学はヒトを全体としてとらえ「未病」を直すという、独特の考え方をもっています。「未病」というのは、健康そうに見えるけれども、病気になるかも知れないといった状態をいいます。

約2000年前に書かれた、中国で一番古い医学書である「黄帝内径(こうていだいけい)」は、「未病を治すことができる医者がもっともすぐれた医者である」といっています。この医学書は中国医学のバイブルといわれていますが、その中に書かれていることは、2000年たったいまでも立派に通用する事柄が多いのです。

東洋医学は、やまいの元をさぐり、その根本から癒していこうという医学です。病人になってしまったものを対象とする西洋医学とはこの点で大きく異なります。  

もう一つは、化学薬品による副作用の問題があります。現代の西洋医学で使われているくすりは化学薬品です。新聞紙上でも騒がれたいろいろな問題がありますから、それを思い出して下さい。しかし、西洋医学で使われるくすりも元々は自然界にある生薬を材料としているものが多いのです。

モルヒネやジギタリス、広い意味でのアスピリンもそうです。ただこれが東洋医学の生薬と異なるのは、化学的に処理して有効成分を取り出したりしているという点です。

東洋医学では、いろいろの生薬の配合によって、ひとりひとりに合うようにくすりを処方してつくるのです。そして、生薬−漢方薬は正しい使い方をしていれば副作用は非常に少ないといわれています。  

最後に、両者の間の大きな違いを一つ述べておきます。西洋医学は診断の結果、病名をつけます。肺炎とか気管支炎とかいうように。

ところが、東洋医学は病名をつけません。「どのようなくすりを与えるべきか」を判断するのです。この患者には葛根湯(かっこんとう)を与えたらよいとか判断するのです。
現在の日本の健康保険制度は西洋医学の診断名だけを受け入れています。漢方式の診断名は受け入れていません。漢方医学がのびない一つの理由でしょう。  

このように、例えは悪いかも知れませんが、西洋医学は、車にひかれてしまった人間を治療するという、緊急治療であり、対処治療なのです。なぜ、車の事故が起こり、なぜ、人がはねられたのかは関係ありません。

東洋医学は、どちらかといえば後者に力点をおいています。事故の原因をさぐり、今後、事故を起こらないようにしようとします。  

「はねられた人間を治療する」という緊急治療−投薬までも含めた西洋医学に対する支払い(保険料)により、いまこの国は破産寸前までいっています。  

国も「事故を起こさないようにしよう」という考えに切り替わってきました。成人病を生活習慣病と呼び名を変えて、「生活習慣」を改めていこうということもその現れの一つです。

誤解の無いようにに書いておきたいことがあります。両者のどちらがよいということをいっているのではなくて、それぞれの特色をいっているのだということを理解してください。

3-1.東洋医学の基礎知識

toyoigaku8一般に、東洋医学といいますと、中国をはじめとして、韓国、日本、インド、イスラムなどを含む医学のことをいいますが、ここでは、中国医学と日本の漢方医学を含んだ範囲を東洋医学と呼びます。

なお、毛沢東以後の中国医学のことを中医学と呼んでいますが、この本は専門書ではないので、分かりやすく、すべて東洋医学という呼び名に統一していきます。

なお、中国医学と日本の漢方医学との違いについてちょっと触れておきます。日本の漢方医学は約1000年くらい前に中国より伝わりました。

toyoigaku4しかし、現代のかたちの漢方医学は15世紀末に田代三喜という人が10数年に及ぶ明での留学を終え、持ち帰ったのが始まりといわれます。もとは中国なのですが、日本では独自の漢方医学として発達していきます。

日本漢方も中国医学も同じように考えている方が多いと思いますが、かなりの差があります。要点だけを述べておきます。  

日本漢方は、中国の医学理論は観念的であるとして、これに批判的です。日本漢方はあまり理屈をつけず、患者の症状によって生薬を処方するのです。症状イコール処方なのです。

これに対し、中国医学では、症状が出た原因をまず考え、治療方針をたててから、その治療に有効な生薬を組み合わせていくのです。

中国医学は、その根本に、陰陽論と五行学説という哲学があります。この理論によって多くの医者達が臨床経験を積み重ねてきて、現代に至っています。ですから、日本漢方からいわせると、「観念的」だとなってしまうのです。

また、実践的な問題では、日本漢方では腹診が重視されるのたいして、中国医学では脈診が重視されます。処方される生薬の量も中国は多くて日本は少ないといったこともあります。 

日本漢方は江戸時代は栄えたのですが、明治になり、西洋を目標として国家建設を目指した明治政府は1883年(明治16年)に医師になるための国家試験を西洋医学のみに限定しました。

toyoigaku7医師になるためには西洋医学を勉強しなければならなくしたのです。漢方をやりたければ、西洋医学による国家試験を通ってからやりなさいと法律を変えてしまいました。この時より、日本の漢方医学は衰えていき、一部の人たちの医学になってしまったのです。

さて、東洋医学にはどういう診療方法があるのかを説明しておきます。

1. 漢方薬による診療。生薬を処方してこれを患者に飲ませ、 病気を治すやりかたです。

2. 鍼灸(しんきゅう)による診療。はりを刺したり、お灸をすえて病を治すやりかたです。

3. 手技(しゅぎ)による診療。手で、もむ、さするなどして ”気”の流れを整えて病を治すやり方です。

toyoigaku24. 気功(きこう)による診療。呼吸法と、運動、そして心の働きにより身体の中の“気”の流れを整えることにより、病を治す方法です。

5. 食養(しょくよう)による診療。飲食物により病を治します。病をなおすのに良い飲食物をとり、病を悪くする飲   食物をとらないようにして病を治します。 

医師は、上記の中から、自分の得意とする分野を選んで病を治すのです。

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・健康サンダルを履き続けて6年
・京都大学と共同研究
・健康サンダルの種類

(以上、漸次作成中)
健康で美しく長生きするために 目次

第1章 毒性・栄養欠乏食品と日本人

1.朝食に「毒物」を口にしていませんか?
2.マーガリンはどうして毒物なの?
3.日本の常識は世界の非常識
4.牛乳を飲んで下痢をしませんか?
5.私たちを取り巻く環境と活性酸素
6.健康の道しるべ、栄養のバランスを考える

第2章 栄養素の基礎知識

1.2万7千人を殺した森鴎外
2.メリル・ストリーブ主演「西洋医学と栄養療法」
3. バランスの取れた栄養とは
4.栄養素の基礎知識 その1 3大栄養素
5.栄養素の基礎知識 その2 ビタミン
6.栄養素の基礎知識 その3 ミネラル
7.栄養素の基礎知識 その4 食物繊維

第3章 東洋医学と漢方薬

1.東洋医学の基礎知識
2.西洋医学と東洋医学の違い
3.漢方薬、生薬そして民間薬とは?
4.漢方薬とエキス剤そして西洋薬との違い

第4章 日本の医療の現状とヘルスメディケーション(自己治療)の普及

1.上がり続ける医療費が国を破産させます
2.病院、医院と医療現場
3.漢方などの代替え医療
4.医薬分業と薬局-セルフメディケーション
5.「街の健康コンサルタント」としての薬屋さん
6. 生命保険業界と栄養補助食品--半病人でもOK

第5章 生活習慣病とサプリメント

1.生活習慣病と危険因子-7つの健康習慣
2.歯周病も生活習慣病の1つ
3.サプリメントで栄養バランスを保つ
4.「正しい栄養補助食品」とは

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