単純な分け方をすると、西洋医学は救急医療又は対処医療であり、東洋医学は診療医学といえます。  

toyoigaku9例えば、伝染病などは西洋医学の分野といえます。臓器移植などもそうです。そもそも現代医学としての西洋医学は伝染病の病原菌発見や解剖からスタートしたのです。

東洋医学は、数千年の長い間に実際に病人に接して蓄積してきた臨床経験の結果であり、いってみれば人体実験によって、なりたっている医学なのです。西洋医学は急速な進歩を遂げたとはいえ、その歴史はまだ百数十年であり、動物実験の上になりたっている医学といえます。

そして更に、西洋医学は部分部分を切りとって診察しようとする医学であり、手術とくすりによって直そうとする医学です。 

これは、大学や大病院の内科が循環器科、消化器科、神経科、などというように、縦割りになっていることでお分かりでしょう。

しかし、人間が病気になったとき、消化器系統が悪いけれど、他はまったく問題ないなどということがあり得るでしょうか。身体はみなつながっているわけですから、消化器系統が悪ければ、他の部分に悪いところがあるのかも知れないのです。また、血圧が上がれば血圧を下げるくすりを使って、血圧を下げます。これは血圧を一時的に抑えているのであって、治療とはいえません。

高血圧の治療とは、高血圧になっている原因をさぐり、その原因を取り除かなければ治療したとはいえません。

これに対し、東洋医学はヒトを全体としてとらえ「未病」を直すという、独特の考え方をもっています。「未病」というのは、健康そうに見えるけれども、病気になるかも知れないといった状態をいいます。

約2000年前に書かれた、中国で一番古い医学書である「黄帝内径(こうていだいけい)」は、「未病を治すことができる医者がもっともすぐれた医者である」といっています。この医学書は中国医学のバイブルといわれていますが、その中に書かれていることは、2000年たったいまでも立派に通用する事柄が多いのです。

東洋医学は、やまいの元をさぐり、その根本から癒していこうという医学です。病人になってしまったものを対象とする西洋医学とはこの点で大きく異なります。  

もう一つは、化学薬品による副作用の問題があります。現代の西洋医学で使われているくすりは化学薬品です。新聞紙上でも騒がれたいろいろな問題がありますから、それを思い出して下さい。しかし、西洋医学で使われるくすりも元々は自然界にある生薬を材料としているものが多いのです。

モルヒネやジギタリス、広い意味でのアスピリンもそうです。ただこれが東洋医学の生薬と異なるのは、化学的に処理して有効成分を取り出したりしているという点です。

東洋医学では、いろいろの生薬の配合によって、ひとりひとりに合うようにくすりを処方してつくるのです。そして、生薬−漢方薬は正しい使い方をしていれば副作用は非常に少ないといわれています。  

最後に、両者の間の大きな違いを一つ述べておきます。西洋医学は診断の結果、病名をつけます。肺炎とか気管支炎とかいうように。

ところが、東洋医学は病名をつけません。「どのようなくすりを与えるべきか」を判断するのです。この患者には葛根湯(かっこんとう)を与えたらよいとか判断するのです。
現在の日本の健康保険制度は西洋医学の診断名だけを受け入れています。漢方式の診断名は受け入れていません。漢方医学がのびない一つの理由でしょう。  

このように、例えは悪いかも知れませんが、西洋医学は、車にひかれてしまった人間を治療するという、緊急治療であり、対処治療なのです。なぜ、車の事故が起こり、なぜ、人がはねられたのかは関係ありません。

東洋医学は、どちらかといえば後者に力点をおいています。事故の原因をさぐり、今後、事故を起こらないようにしようとします。  

「はねられた人間を治療する」という緊急治療−投薬までも含めた西洋医学に対する支払い(保険料)により、いまこの国は破産寸前までいっています。  

国も「事故を起こさないようにしよう」という考えに切り替わってきました。成人病を生活習慣病と呼び名を変えて、「生活習慣」を改めていこうということもその現れの一つです。

誤解の無いようにに書いておきたいことがあります。両者のどちらがよいということをいっているのではなくて、それぞれの特色をいっているのだということを理解してください。